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今回のグッドリノベーションストーリーの舞台は池袋にある老舗銭湯「H湯」。主人公は、会社員生活から一転して銭湯経営を引き継いだ原島さんとその奥様です。新生活にのぞんでお二人が移り住んだのは、「お風呂のない」築32年のビルでした。ご夫婦は、自分らしい、新しいライフスタイルを築くため大掛かりなリノベーションを決意します。

これは、激変する生活環境の中で理想の住まいをつくり上げた若きご夫婦のリノベーションストーリーです。

会社員から
老舗銭湯の若き三代目に。

横浜で会社員をしていた原島さんは30代。以前は建築関係の仕事についていました。甘いマスクと寡黙なたたずまいが印象的な好青年。一時はプロミュージシャンを目指すほどの音楽好きでしたが、4年前に結婚してからは仕事と生活に専念する毎日です。一方原島さんの奥様は、池袋で代々銭湯を営むご一家に生まれたお嬢様。お二人は初々しい新婚生活の中でやがてお子様が生まれるのを待つ、そんな穏やかな日常生活を過ごされていました。

同じ頃、奥様の実家ではある問題に頭を悩ませていました。それは家業の銭湯「H湯」の後継者問題でした。跡継ぎがいなければ家業はなりたちません。長年続いた老舗の銭湯だけに、奥様のご家族としては、なんとかのれんを守りたいとの思いがありました。ここで原島さんは人生の一大決心をします。「自分が銭湯を継ごう」と。

「きっかけは、妻のひとことでしたね。それまで建築関係の営業の仕事をしていたんですが、工事現場に行くとすごく空気が悪いんですよ。それで妻が身体の心配をしてくれて、仕事を変わることも考えていたんです。そんなときに妻の実家で、銭湯を続けていくにはどうしたらいいかという話し合いがあって、引き継ぐ人がいなければのれんをたたむという話まで出た。それなら自分がやろうかな、という感じでしたね。ずいぶん思い切った決断をしたと思うけど、新しい生活に挑戦するのもいいかなと・・・」

普通の会社員だった原島さんにとって、銭湯経営はまったく未知の世界です。見るもの聞くもの、すべてが初めてのことばかり。それでも、一度やると決めた原島さんは、仕事も生活環境も一新して、新たな世界に飛び込むことにしました。住まいも引越しして、銭湯のあるビルの最上階に移り住むことにしました。

銭湯はご近所やお客様とのお付き合いがとても大切な世界。長年通い続けるお得意様にとって、馴染みの銭湯がなくなるのは寂しいものです。老舗銭湯に「三代目の跡取り」が誕生したことに、昔ながらのお客様はたいそう喜んだそうです。

結婚して穏やかな日常生活を過ごす

移り住んだ銭湯ビルに
 「なかったもの」とは。

原島さんが受け継いだH湯には70余年の歴史があります。創業は終戦直後。空襲の被害で焼け野原になった池袋の町に、小さな「手作り」の銭湯として生まれました。当時営業を始めたのは、原島さんの奥様のご祖父母でした。戦後の、だれもが苦しい生活をしていた時代にあって、その小さな「お風呂やさん」はどれだけ地域の人々の支えになったでしょうか。

時代が豊かになるとともにH湯は多くのお客様でにぎわい、昭和60年代には建物を6階建ての鉄筋コンクリートビルに改装しました。銭湯は地下で営業し、中層階にはテナントが入り、6階は銭湯従業員用の住居にあてました。今回、原島さんが移り住んだのが、この6階の住まいです。

しかし、新たな住まいに引っ越してきた原島さんは、この新居に大きな戸惑いを感じました。なんといっても築32年の建物。設備も古く、また個室の多い変則的な4LDKという間取りは、若いご夫婦の暮らしには似つかわしくないものでした。そしてもうひとつ、原島さんご夫婦を困らせたのは・・・

「実は、お風呂がなかったんですよ(笑)」「地下が銭湯ですから必要なかったんでしょうね。でも、やっぱりお風呂は自宅に欲しいなって思いましたよね」

生活を変えられるという
ワクワク感。

ご夫婦は、この部屋で約1カ月を過ごした後、ついにリノベーションを決意します。リノベーション会社は原島さんがインターネットで探し、数社をリストアップ。その中で奥様が最も気に入ったという積水化学のマルリノに決めました。

「インターネットで事例を見ていたら、とても住みやすそうだったのと、自然素材の床を薦めていて、それが他にない感じだったから…」(奥様)

「建設関係の仕事をしていたせいかもしれませんが、しっかりした技術を持った“大手さん”がいいと思っていたので、僕も賛成でした」(ご主人)

業者が決まると、次のステップはリノベーションプランナーとの打合せです。住まいの現地調査に訪れたプランナーに、原島さんはいくつかの要望を伝えました。ひとつは、個室がたくさんあるより広々としたスペースが欲しいということ。二つめは、奥様のご希望で、オープンキッチンが欲しいということ。三つめに、お風呂が欲しいということ。そして最後のひとつが、寒さをなんとかしたい、ということでした。

折しもプランナーが原島さんのお宅まで相談に訪れたのが一月の寒い日。打合せをしている間も部屋が寒く、長時間エアコンをつけたままなのにぜんぜん部屋が暖まらなかったといいます。30年以上前に建てられたビルは「無断熱」。特に天井部が外気に接するビル最上階は中層階の部屋に比べて寒いと言われます。

快適な暮らしのためには断熱施工が不可欠。プランナーの提案は、室内の内装をすべて取り払って住宅性能そのものを改善する「スケルトンリノベーション」でした。大掛かりなリノベーションになりますが、それだけに大胆な間取り変更ができるのもメリットです。原島さんはマルリノの提案に大共感。まったく新しい、理想の生活環境ができそうな予感にワクワク感を抑えられなかったといいます。

マルリノの提案に共感する
生まれ変わった住まい。

生まれ変わった住まい。

いよいよスタートしたリノベーション。原島さんがこだわったのはデザインでした。特に、バスルームとサニタリー、キッチンには、何度も細かくプランナーに要望を出されたといいます。

「最初に、あんまり具体的なイメージをお伝えできなくて、その後、ああしたいとか、こうしたいというのがいろいろ出てきてしまって・・・。いただいたプランが途中からころころ変わっちゃって」(奥様)

「でも、その都度、新しい提案をしてくれて。こだわった分だけ、納得のいくデザインになったと思っています。今はとても気に入っていますね」(ご主人)

「最初はデザインテイストを伝えるのが難しかったんですが、インターネットやスマホでいろいろなインテリアデザインを見ながら“こんなふうにしたい”って伝えるのが早いということがわかったんです」(奥様)

「妻がプランナーさんといっしょにショールームを見に行って、お気に入りのキッチンを見つけてから、部屋のデザインテイストが固まったような気がします。部屋全体がスタイリッシュになっていきました」(ご主人)

そして待ちに待った新しい住まいの完成。

間取りは3LDKから1LDKに大変身。そのプランは、かつての間取りの面影もないほど大胆なものでした。ご夫婦が持て余していた3つの個室はすべて取り払われ、住まいの中心には広く開放的なリビングダイニングが生まれました。床はぬくもり感のある自然素材の無垢フローリング。壁には、室内の水分を“溜め込んだり放出したりすることで湿度をコントロールできる”デザインタイル。奥様が一目惚れしたというオープン型キッチンは、スタイリッシュなデザインで存在感も抜群です。またリビングの隣には、将来のお子様の部屋を想定した予備スペースも設けられました。

ベッドルームには、個室1部屋分もの広いウォークスルークローゼットが隣接し、ベッドルームからキッチンへと通り抜けることのできる「回遊型動線」が採用されました。またキッチンには、ウォークイン型のパントリーがあり、奥様こだわりの料理道具や調味料がずらりと並びます。

「キッチンもパントリーも予想以上だった」というご夫婦。

「料理するのが楽しみになるね」と笑顔でご主人が冷やかすと「これから頑張る。期待してね」と奥様が照れた笑みを浮かべます。

新婚家庭ならではの初々しい会話の中にも、新たな住まいを得た喜びが満ちあふれています。

ウォークイン型のパントリー

家の隅々まで
風が吹き渡る気持ちよさ。

実際に住み始めてわかる暮らしの質の変化も見逃せません。

今回のリノベーションでは、壁も天井部もすべて断熱化しました。「いくら暖房しても暖かくならなかった」という室内は、一年中ほとんど冷暖房なしで過ごせる快適空間に変身しました。

また、開放的な1LDKに大幅な間取り変更をしたことで、「室内を抜ける風を感じることができる」ようになりました。新鮮な空気が住まいの隅々にまでそそぎ込んでいきます。窓は二重窓にしたことで遮音効果も高く、室内はいたって静かです。音楽好きの原島さんは、「ギターの音を出しても外にもれにくいから、家でギターの練習ができるようになりましたよ(笑)」

ホテルのような浴室で
ビールを飲む。

ホテルのようなサニタリールーム

ご夫婦の自慢は、まるでホテルのようなバスルームとサニタリールームです。大きな窓からは光が注ぎ込み、目がくらむほどの明るさ。壁一面のミラーと海外デザイナーによる洗面ボウル、柔らかな間接照明、ルームフレグランスが香る華やかな雰囲気が素敵です。広く、豪華な造りのバスルームはテレビ付き。「本当はジャグジーもつけたかったんだけど・・・」と原島さん。休みの日には、「ビールを飲みながらゆっくりとお風呂に入り、好きなテレビを観て楽しんでいます」

原島さんの大好きな場所がひとつ増えたようです。

オン・オフの切り替えで仕事も家庭も充実したものに。

オン・オフの切り替えで
仕事も家庭も充実したものに。

愛犬と暮らすリビング

老舗の銭湯を引き継いだ原島さんご夫婦は、リノベーションによって上質感溢れる「二人の城」を築きました。今は、ご夫婦二人、幸せで快適な生活を満喫しています。仕事が終われば、お気に入りのリビングで思い思いの時を過ごします。ご主人は大好きなバーボンを飲み、奥様は愛犬のヨークシャーテリアと遊ぶひととき。とても優雅な暮らしぶりです。

「友達には羨ましがられますよね。都内の新築マンションだと、私たちの年代では手に入れることはちょっと難しいですからね。」

銭湯の仕事は夫婦で取り組んでいるそうです。交互に番台に座り、裏方の仕事も多忙です。閉店後の掃除も体力勝負だといいます。近頃は、お客様の顔を覚え、さりげなく会話しながら心地よさを感じてもらうことにも馴れてきました。

仕事はそれなりに苦労も多く大変なようですが、当の原島さんご夫婦はいたって自然体で、明るく、前向きです。

「それはやっぱり、居心地のいい、気に入った家があるからじゃないでしょうか」

職場と住まいが近いだけに、仕事と家庭のくつろぎ、つまりオン・オフのメリハリは大切だといいます。ご夫婦が住まいの住み心地やデザインにこだわったのも、仕事が終わった後、めいっぱい自分たちらしく過ごせる場所を求めてのことだったのです。いい家は人の力になります。お二人の言葉からも、心地よい幸せな住まいが、どれだけ日々の活力になっているかが伝わってきます。

最後に、若き三代目が担う銭湯経営は、これからどのような未来を描くのでしょう。

「将来を考えると難しいことも多いけど、僕はもう少し時代の流れに任せていこうと思います。お得意さまや、妻の家族の思いを考えながら・・・」(原島さん)

「でも、最近はお風呂に来る若い人が増えてきたんですよ。珍しさや懐かしさみたいなものに惹かれる人が多くなってきてるのかもしれないですね。もっと新しいお客様に来てもらえるように笑顔でがんばりたいですね」(奥様)

都会の真ん中で、若い力に支えられながら、今日もH湯に灯りがともります。