「リノベーションて、
こんなものなのかなあ」
篠澤さんは、精力的にリノベーションのことを調べ始めました。もとより、ご主人は一度興味を抱いたら、とことん調べなければ気がすまない性格でもあり、短期間のうちにリノベーションの知識を身につけました。ネットでリノベーション会社を検索しては、各社の事例・特徴を比較し、会社の帰りに目を付けておいたリノベーション会社を直接訪ねたり、気になることは全て熱心にリサーチしました。数年前に両親が2階をリノベーションしていたことから、一時は同じ業者に頼むことも考えましたが、篠澤さん夫婦は敢えて「自分たちらしさ」にこだわり、自分たちの目と手と足で、とことん納得のゆくリノベーション会社を捜そうと決めていました。
祖父母が住んでいた最上階である3階の住まいは3LDKの間取り。リビングダイニングを中心にして四隅に個室があり、自分達にとっては、必要以上に個室がたくさんありました。また、せっかく3階にありながら風通しが住まい全体に行き渡らないのも、残念な点でした。篠澤さんは、この間取りを完全にリセットし、まったく新しい住まい環境を実現するために、スケルトンリノベーションを選択します。
ところがこの時、夢をもってのぞんだリノベーション計画は意外な壁にぶつかりました。相談をした数社の提案は、いずれも篠澤さん夫婦の希望を満足させるものではなかったのです。
「突っ込んだ提案がない・・・というのかな。どのリノベーション会社も、壁の一つや二つは取るんですけど、基本的に以前の間取りを残そうとするのですよ。キッチンなどの水廻りの位置もそのまま。“排水管の問題で移動するのが大変だ。”というのが理由らしいんですけど。できないからやれないのか、やりたくないから、やらないのか・・・。その頃は、理想と現実のあまりの違いに、あーリノベーションって、しょせんこんなものなのかって思いました」
他社がやれなくても
ウチはやります。

「ところが、他社がやれないと言ったことを、やれます、と言い切ったのがマルリノさんでしたね」
実は、複数のリノベーション会社との相談や提案が進む中、奥様が密かに期待をかけていたのが積水化学のリノベーション、マルリノだったといいます。理由を尋ねると、首をかしげながら当時を思い出してくれました。
「なんでかな? 最初にプランナーさんたちが、現地調査にいらした時に、この家のことをすごく大切に考えてくださっているように感じたんですね。それから、私たちの曖昧な希望や夢みたいな、そういった漠然とした話を熱心に聞いてくれて、それを形にしてくれようという、熱意みたいなものを感じました。そこに信頼感を感じて、改めてマルリノのホームページを見たら、自然素材の無垢床を勧めていたり、住環境に力を入れていたり、明るくて、間取りも快適そうで、その印象がすごくよかったんです」
果たして、マルリノが考えたリノベーションプランってどのようなプランだったのでしょうか?
「そのプランを見たときは、呆気にとられました」(ご夫婦)
「想像もできないような、こんなことができるの? みたいなプランだったんです」(ご主人)
それでは、現在のお住まいで、その”呆気にとられたプラン”を、少しみてみましょう。
個室の多い3LDKは、ひろびろとした1LDKに大変身。玄関を開けると、奥様のお仕事である鍼灸施術室とリビングダイニングへつながる扉が目に飛び込んでくる。リビングの扉を開けると、そこは間仕切り壁がなく、広々とした明るいリビングが。なんといっても住まい中を歩き回ることができる空間があり、納得する住まいへ大変身。ベッドルームにもドアはなく、収納棚で仕切られた程度。キッチンや浴室への移動も、住まいの中から自由にアクセスできる点は、いかにも便利そうでした。また、リビングダイニングには、ふたりが並んで座れるオープン型のパソコンブースがあり、リビングの空間を邪魔することのない、自然なスペースになっていました。
「びっくりしましたね。パソコンブースができるとは思ってもみなかったし、そのデザインがまた船のコックピットのように独創的だった。全体の間取りも既成概念にとらわれない自由さにあふれていて、しぼみかけた夢が再び膨らみました」(ご主人)
「これは間取りの提案というよりも、暮らし方やライフスタイルそのものの提案なんだと思いましたね。こういう暮らし方がふたりにお似合いですよって言ってもらってるように感じました。うれしくて、提案をいただいてからずっと胸がきゅんきゅんしました」(奥様)
互いの気配りが生んだ
「パソコンブース」。

思い切った間取り提案をした担当プランナーにも話を訊くことができました。どうしてこのような大胆なプランが出来たのか、疑問をぶつけてみました。
「おふたりの話を聞いていて、何か新しいモノ、いままでにない新しい暮らし方を求めているなって感じたのですね。実は具体的な要望としては、奥様の施術室が必要ということだけで、間取りなどは自由にやってくださいという感じだったのです。それでこのくらい大胆な間取りでも、受け入れていただけるかなと思って提案しました。寝室に扉がない間取りなんて、人によっては信じられないって言われます」(担当プランナー)
リビングダイニングのパソコンブースは、とてもおもしろい提案ですね。
「あれは、奥様のひとことがヒントになったのです」
奥様はご主人に、一人で過ごしながら趣味の世界に没頭できる書斎かパソコンルームを作ってもらうことを勧めたといいます。「男の人にとって、書斎は特別な場所だと思うから」というのが理由でした。それに対しご主人は、書斎みたいな部屋があると自分はそこに引きこもってしまうから要らないと頑なに断っている。そのふたりの会話からお互いの思いやりを感じ取ったプランナーが生み出したのが、“船のコクピット”のようなパソコンブースなのです。
敢えて個室型の書斎にせず、リビングダイニングにいながらにして、なおかつそこに座るとしっかりとプライベート感や快適さが感じられる不思議な空間。パソコンを使っている間も、キッチンにいる奥様と会話をすることができます。またふたり並んでパソコンに向かって時間を過ごすこともあるそうです。ここでは、お互いのすることを邪魔することなく、お互いが好きなことをし、それでいてお互いの存在をつねに感じていられるのです。まったく新しい発想による書斎の完成。これは、奥様の思いやりが生んだ、ご主人への贈り物ではないでしょうか。
杉の無垢床ってこんなに暖かい。