希望エリアで新築物件が見つからず、中古マンションリノベーションにたどり着いた都内在住の若いご夫婦。暮らしやすさを追求しながらも、ところどころに余白を残す。その工夫とバランス感覚が、コロナ禍の変化にも柔軟に対応する住まいを生み出しました。

玄関からバルコニーまで
ぐっと心地よく広がった。

リノベーション after

元田様が選んだのは、築22年の3LDKマンション。間取りはごく標準的で、玄関を入るとまず左右に一つずつの洋間。まっすぐ続く廊下沿いに洗面、トイレ、浴室がまとまり、その先にLDKと和室が続いていました。角部屋で窓が多く、広さも74㎡と十分ですが、ご夫妻が気になったのは各部屋がドアや間仕切りで隔てられていること。開放的な雰囲気にしたいというお二人の想いを叶えるために、できるだけ仕切りのないすっきりとした間取りへと変更することにしました。

とはいえ、構造上の都合で水まわりの位置は大きく変えられません。玄関から洋室、水まわり、LDKへと続く基本的な配置は活かしたまま、和室をなくしてリビングを大胆に広げました。また、もともとのキッチンはL字型の壁付きタイプで独立感があったため、リノベーションではリビングを見渡せるオープンタイプキッチンに。と、言葉で書くと普通の対面キッチンかと思われそうですが、間取りを見ると……

「絶妙ですよね! キッチンの角度(笑)。ダイニングに対して垂直でも水平でもない、斜めの配置。私たちも最初は心配で、まっすぐにしなくていいんですか? って聞いてしまいました。でも住んでみると、意外と気になりません」

実はこの物件、全体がきれいな長方形ではなく、奥に行くほど片側が広がる台形型をしています。そのため片側の壁はラインが斜めになっており、そのラインと水平にキッチンを配置したというわけ。オープンな間取りなので、玄関から廊下を抜けるとすぐにこの斜めキッチンが現れますが、廊下も広がりのある緩やかなつくりにしたので不思議なほど違和感はありません。

玄関からバルコニーまでぐっと心地よく広がった。
元田様邸の実例

さらに、リビングに隣接するバルコニーにもひと工夫。白いタイルの床材を敷くことでフローリングとの連動感と明るさを演出し、視覚効果によって室内により広がりを持たせました。

「せっかく広いバルコニーがあるから、ここもきれいにしたいねと話していたんです。最初は自分たちでDIYでもしようと思いましたが、セキスイさんにオリジナルのタイルがあると聞いたので、なら一緒にお願いしようと。タイルにして、すっごくよかったですよ」

こうした細かな工夫を重ねた結果、当初ご夫妻が惹かれたこの部屋の“抜け感”は、より一層心地よいものへの広がりました。

リビングに隣接するバルコニーにもひと工夫
元田様邸の実例

一日の流れで考えたら、
必要なことが見えてきた。

玄関からもLDKからも扉を介さずアクセスできる洗面台
元田様邸の実例

でも、ご夫妻のこだわりが本領を発揮するのはまだまだここからです。リノベーションを決めたときから、機能面への要望が強かったお二人。その想いは、例えば洗面まわりのつくりを見るだけでもよく分かります。

まず目を引くのは、脱衣室から独立し、玄関からもLDKからも扉を介さずアクセスできる洗面台。どちらかが入浴中でも洗面台を使えるようにしたいという考えからですが、手洗いが欠かせない今、帰宅後の動線にも配慮できる形になりました。一方の脱衣所はウォークインクローゼットとつながっているという、これもまためずらしい設計。洗濯から収納までの家事動線を考慮した結果です。洗濯物をバルコニーで干すことまで考えると、通り抜けられるウォークスルークローゼットにしたくなりますが、乾燥機付きの洗濯機なので干すことはないだろうと判断。代わりに脱衣所に物干し用のポールを設置しました。さらにクローゼットの壁と天井の間には隙間を設け、通風にも配慮しているという細やかさ。

通風にも配慮しているウォークインクローゼット
元田様邸の実例

「今住んでいる家をつくり変えるのではなく、新しくつくる家。想像がつきにくい分、住んだ時のシミュレーションをたくさんしました。家から買ってきて、ここに荷物を置いて、ここで服を脱いで。一日の流れで考えると、ここに収納が欲しいなとか、ドアを2回も開けるのは大変だなとか、気づくことがいろいろあったんです」

雑誌を見たりWEBを検索したりすれば、魅力的な間取りやおしゃれな設計はいくらでも見つかる世の中。でも、住まい方はやっぱり人それぞれです。自分たちの暮らしをベースに、リアルな視点から暮らしやすさをシミュレーションする。それはリノベーションの基本でもあり、成功の秘訣でもあるのです。

コロナ禍で増えた在宅時間。
快適さと距離感に支えられて。