「まさかホームセンターに通い詰めるようになるなんて」リノベーションを機に知った、仕事一筋だった夫の意外な一面。家のことをゼロから見つめ直したら、自然素材のやさしさに満ちた家族にも愛犬にも心地よい手づくりの住まいが完成しました。

家のことなんて、興味はなかった。

新築マンションやタワマンも見学

リノベーションを選ぶ人は、家や生活への関心が高く、こだわりの強い人。一般的にはそんなイメージがあるかもしれませんが、もちろん誰もがそうというわけではありません。リノベーションを体験した人は、不思議と前より暮らしに興味が湧く。それは、リノベ経験者の大多数に言えることかもしれません。代表的な例を挙げろと言われたら、迷わずお話したい人が一人。今回のグッドリノベーションストーリーの主人公、青木邸のご主人です。

特にこれといった趣味もなく「仕事ばかりしていた」という仕事人間。海外赴任の期間も長く、家の掃除もあまりしたことがなかったとか。ところが単身の海外赴任を終えて帰国し、家族で暮らしていた社宅の契約期間がまもなく終了することに。こうして、次の住まいを考えることになりました。

まったく知らない街に引っ越すよりは、勝手知ったるここが良いだろうと、近所の新築マンションや、いわゆる“タワマン”も見学。でも、ご主人も奥様もどうもしっくりこない。いろいろと調べているうちに、「あ、リノベーションっていうのがあるんだ」と行きつきました。

「ちょうど築20年の中古マンションが見つかって、スケルトンリノベーションなら間取りを一から考え直しても予算内に収まるっていうので、じゃあリノベにしようかと」

ちょうど帰国したタイミングで社宅の契約が終わり、そしてはじめて知ったリノベーションという方法。偶然が重なって、青木家のリノベーションが始まりました。

「じゃあ、それで」よりも
「こうしては?」が欲しい。

リノベーションの知識

フルリノベーションをしよう。そう決めたところで、それまでインテリアにすらほとんど興味のなかった青木様。「クロスなんて言葉も知らなかった」というほど、建材も建築知識もゼロからのスタートです。そこでまずは、大量の本を購入! リノベーションに関する勉強を始めました。

すると次第に「無垢材」「漆喰」「珪藻土」などの言葉が気になり、リフォーム雑誌で実例を見るうちに、「そんなに良いならやってみようか」と乗り気に。奥様はもともとキッチンと洗面所を一直線につなげたいといった要望をお持ちだったので、そうした希望も取り入れながら、自分たちの理想の間取りを考えていきました。

実はこの時点で、奥様はご主人の隠された部分に少しずつ気づき始めていました。「この人、こういう自然の素材が好きだったんだ……」と。そしてこうした“発見”は、リノベーションが進むにつれてさらに増えていくことになりますが……それはまた追々。

さて、ある程度知識がついたら、次は肝心のリノベーション会社の選定です。リノベ初心者ながらも、自分たちの要望をまるでお仕事のようにパワーポイントでしっかりとまとめ、5社ほどに声をかけたと言います。リフォーム会社はそれぞれ独自の強みがあったり、価格が高かったり安かったり、個性もさまざま。たくさんの業者があるなかで、青木様がマルリノを選ばれた理由は何だったのでしょうか。

「もっとこうしたほうがいいのでは、と提案してくれたのが、唯一マルリノさんだけだったんです。他は、私がこうしたいと伝えると“じゃあそれで”って感じで。最初は見た目しか考えていませんでしたが、基本的な住宅性能の見直しも提案してくれたので、そうした点は感謝していますね」

いくら本で勉強したとはいえ、それまでリノベーションの経験も興味もなかった完全初心者。必要なのはイエスマンよりも、しっかりとお客様の想いを形にして提案してくれるプロであることは言うまでもないかもしれません。

リノベーション前の間取り
自分たちだけで考えるより、
断然よくなった。

自分たちだけで考えるより、
断然よくなった。

リノベーション後の間取り

マルリノからの提案を受けたとき、そのプランを見た青木様は「自分で考えるより断然いい!」とすぐにわかったそう。例えばその一つが、玄関のプランです。ご夫婦と息子様で合計3台の自転車を収納する必要があり、加えて「土間」という空間への憧れもお持ちだった青木様。「とにかく玄関を広く」と要望を出されました。でもマルリノからは、「希望通りの広さを取ると、中に入ったときに逆に室内が狭く感じてしまう」との指摘が。土間はぎりぎりまでの広さに抑え、その分リビングを広めに設けるほうがよいのではと提案されました。当初の希望よりは狭い玄関・土間になったものの、実際に暮らしてみると物を置くにも何か作業をするにも広さは十分。青木様も「なるほど」と納得されました。

とにかく玄関を広くとの要望

奥様ご所望のウォークインクローゼットについても然り。計画当初は寝室の北側にレイアウトする予定でした。リノベーションの検討を重ねる中で、寝室からクローゼットを通って(スルーして)リビングへアクセスする、ウォークスルークローゼットを寝室の南側にレイアウト。リビングへのアクセスは、寝室の出入り口から廊下を経ることなく、クローゼットをスルーしていけます。まるで青木様だけが知る裏通りのよう……。扉もなくしてすっきりさせた新しい形の収納は、見た目にも広さを感じます。

寝室からリビングへの導線にウォークスルークローゼットをレイアウト

「風の通り抜けまで考えてくださって……寝室にも熱気がこもらなくなったので、気持ちがいいですね。あと洗濯の動線もラクになりました」

もう一つ、青木様がまったく気にしていなかったのが住まいの断熱性です。マルリノから「オススメはこれです」と提案された二重窓。他社からの提案は、一切なかったそう。

「私たちも断熱性への優先度は低かったんですよ。そもそも全然考えていませんでしたから。でも、これも住み始めたら納得ですよね。あったかいんですよ。10月に入居しましたが、冬はエアコンを2回しか使いませんでした。もともとエアコンが好きではなくて、前の家では室内なのに寒くてジャンパーを着こんでいたほど。今は家事をし始めると一枚脱ぐくらいです」

自然のもので心地よく暮らす。
そんな価値観にシフトした。

杉の床を気に入った愛犬

様々な提案によって変更した点もあれば、当初の要望をそのまま実現させたこともたくさんあります。そのひとつが、ご主人こだわりの無垢材フローリング。雑誌で見て気になっていたご主人は、自らホームセンターへ行き、実物を比較。数ある素材の中で、特に杉が気に入りました。

「リノベーションをするなら、床だけは杉の無垢にしようと最初から決めていたんです。香りもいいですし。そしたら、マルリノさんが真っ先に提案してくれたのも杉だった。これは相性がいいなと思いました」

青木邸には、ご主人が海外赴任時代から可愛がられている愛犬のパグがいます。これまで合板のフローリングの上では寝ることになかったそのワンちゃんが、リノベーションしてからはその杉の上で寝るようになったそう。それも「めちゃくちゃ気持ちよさそうに」。おかげで床の上は犬の爪痕だらけだとおっしゃいますが……

「傷はね、もう気にしないようにしようと。でも部分的にやすりで削ってオイルを塗りなおしたりもしています。前はそんなやすりやオイルの知識も全然なかったんですけど、今だと120番とか240番とかピンとくる(笑)」

そしてもう一つ、愛犬と暮らす家にとってうれしい効果を発揮したのが漆喰の壁です。これもリノベーションについて勉強する中で初めて知り、「一度知ってしまうと漆喰以外はない」というほど、ほれ込んだ素材。リビング、廊下、そして玄関の壁はすべて漆喰を採用しました。すると、愛犬のにおいがまったく気にならなくなったのです。以前は玄関を開けると、犬を飼っている家庭特有のにおいを「むわっ」と感じることがあったそうですが、そのにおいがまったくしない。むしろ今は、玄関を開けると杉の香りが「ふわっ」と漂うように。自然素材ならではのやさしさに包まれた、住む人にもペットにも心地よい空間になりました。

知れば知るほど、
“クリエイティブなスイッチ”が押されて。

知れば知るほど、
“クリエイティブなスイッチ”
が押されて。

ディティールの工夫とセンスが感じられる玄関

ご夫妻のこだわりが発揮されたのは、素材だけではありません。完成した青木邸は、それまでインテリアに興味がなかったなんてウソのような、ディティールの工夫とセンスが感じられます。まず玄関を入ると、目を引くのが剥き出しの配管。「インダストリアル風のダクトダッシュ。あれは絶対に譲れなかった」と、わざわざ天井を抜いて実現させました。そのテイストに合わせ、室内に続くドアはレトロ調のデザインに。スイッチプレートもメタル素材を選ぶなど、細部にまでご主人の“こうしたい”が表れた空間になっています。

「そういう細かい部分も、もうめちゃめちゃ調べましたね。そうすると、やりたくなっちゃうんです(笑)」

そう笑うご主人。なるほど、今まで家のことに興味がなかったのは、ただ家のことを考えたり調べたりする「きっかけ」がなかったからなのかもしれません。一度知ってしまえば、まるでご主人の中の“クリエイティブなスイッチ”が押されたかのように、パチパチッとアイデアがひらめき出しました。

「私が絶対タイルにしたいと言って。本当はそこに赤い金魚を泳がせたかったんですけど……モザイクタイルだから切り出すのが難しくて、今回は実現しませんでした」

そんな心残りはありながらも、着々と家が出来上がっていく様子をほぼ毎日のように見学しに来ていた二人。完成したときにまず感じたのは、感動やうれしさよりも「そうそうこれこれ、欲しかったものがちゃんとあるね」という落ち着きだったのだとか。

改革されたのは、
働き方だけではないのかも。

こだわりのリビング

リノベーションを通じて、予想外にも互いのこだわりや意外な一面を知ることになった青木様ご夫妻。リノベーションが終わった今もご主人の興味と熱は冷めることなく、なんとホームセンターで材料を揃え、棚やテレビ台を自作するほどのDIY好きに変身! 自転車を置くためにと広くとった土間は、今ではご主人のDIYスペースとしても活用されているとか。

「夫は全然そんなタイプじゃなかったので、結婚25年過ぎにして『こんな人だったの?』と(笑)。年齢的にも、この先なにか趣味を持ったほうがいいんじゃないかってずっと言っていたんです。それが今では、ここをこうしたい、こういうのが欲しいと伝えると作ってくれる。家じゅうにいくつも自作の作品があるので、あれはすごく嬉しいです」

もちろん、ご主人の意外な一面の発見に喜んだのは奥様だけではなく、ご主人自身も同じ。

「趣味がね、土日にジムで筋トレをするくらいだったんですよ。休みの日もずっと働いていて。でも今、働き方改革などの影響もあって、昔ほどは仕事してないんです。リノベーションのおかげっていうわけでもないでしょうけど、たまたまいい時にリノベーションがあって、仕事以外も家のことも考えるようになって。息子の部屋の棚を自作したら、意外と自分に向いているんじゃって発見できた。家の掃除も全然しなかったのに、今は毎日やっていますよ」

仕事の時間が減っても、何をすればいいのかわからない。そんなサラリーマンたちの声をよく耳にする昨今。でも、そんな人たちがすべきことは、案外シンプルなことなのかもしれません。「暮らしに目を向ける」「家のことを見つめ直す」。青木様がそうだったように、趣味や自分の意外な興味は、家の中にこそ落ちているのかもしれないから。そして仕事にはいつか終わりが来ても、暮らしはずっと続いていくのだから。

「今度は息子の寝室の壁も変えてもいいかな、まだ一年も経っていないけど(笑)。リノベーションは一旦終わったじゃないですか、でも、まだ自分で何かやりたいなって思うんです」

今回のリノベーションでは、たくさんの発見が。住まいを自分達らしく仕上げる余白を見つけていくことが、青木様ご主人の秘めたるクリエイティブスイッチを押すことになったのではないでしょうか?

そういえば、奥様が諦めたモザイクタイルの赤い金魚。もしかすると数年後、ご主人の手で生み出された小さな金魚が、青木邸のフローリングの隅でのびやかに泳いでいるかもしれません。

タイルの敷かれたフローリング