築36年のご実家マンションを、娘様一家の新居へリノベーション。今ある間取りは大切に活かし、子育て視点の工夫などを盛り込んで永く暮らせる快適な新居へと生まれ変わらせました。

実家を見つめ直したら
眠っていたものが動き出した。

 いつの間にか、誰も弾かなくなった古いピアノ。もしかするとあなたのご実家にも、そんなピアノが眠っているのではないでしょうか。ご実家をリノベーションする。それは、忘れられていたピアノが、再び音を奏で出すきっかけになるかもしれません。例えば、今回のグッドリノベーションストーリーの主人公、高木様のように―――

築36年になる奥様のご実家マンションをリノベーションしたのは、東京の下町に暮らす高木様ご一家。奥様のご実家は、今から23年前、一家で浜松からお祖母様の暮らすこのエリアに引っ越しました。マンションはその時、お母様がご購入されたもの。以来、お母様とお兄様、そして奥様で暮らしてきました。奥様はご結婚すると、実家近くの別のマンションにご主人と二人のお子様と暮らしていましたが、お子様の成長やお兄様の独立、さらにご自宅の老朽化が重なり、ご家族の中に一つのアイデアが浮かびました。

奥様の暮らすマンションと実家のマンションを、入れ替えてはどうだろう?

「それまで一回だけ、水漏れがあってリフォームしたことはありました。でもいろんなところにガタが来ていましたね、水まわりも心配で。私だけのためにリフォームするなら、お互いのマンションをチェンジしたほうがいいかと思いました」

大胆につくり替えるより、
大切に活かすことを考える。

ダクト位置など構造上の問題もあるため、基本的な間取り配置は変えない。それが、高木様のリノベーションの基本条件でした。しかし新たな暮らしを始めるにあたって、「ただきれいにすればいい」というわけでもありません。大切なご実家のリノベーション、自分たちが本当に心地よく納得できる形にするため、説明会にはお母様やお兄様も一緒に参加。二世代が一緒になって、これからの暮らしを思い描いてきました。

まずはリビングとキッチン。それまでは「いかにも“部屋”という感じだった」と閉塞感が気になっていたリビングを、キッチンや廊下とつなげてオープン空間にしたい。次に、玄関とその隣にある脱衣所。玄関が狭く不便だったのに対し、隣接する脱衣所は必要以上の広さがあったため、使い勝手の良いスペース配分に変更したい。そして最後に、お子様のこと。高木様邸には小学1年生と4歳になる元気なお子様がいるため、家中二人が安心してのびのび過ごせるようにしたい……。

基本の間取りを引き継いだままリノベーションするより、すべて0から考え直したほうが、もしかするとラクな場合も多々あります。でも、そうした大規模変更だけがリノベーションではありません。今ある間取りを活かしつつ、暮らしやすさを丁寧に見つめ直して、これからの暮らしに合わせてアップデートする。そんなリノベーションもまた、多くの方が求めるものかもしれません。

さて、ここからはセキスイの腕の見せ所。高木様の様々なご要望に対し、セキスイは元の配置は活かしつつ、カウンターや設備の向きを変えたり収納を工夫したりすることで一つ一つ丁寧に応えていきました。その結果は……。

ちょっとした工夫だけで、
暮らしがこんなに変わるなんて。

ちょっとした工夫だけで、
暮らしがこんなに変わるなんて。

オープン性を重視した空間にするため、リビングはあえて大きな家具や区切りを設けないプランに。壁を向いていたI型のキッチンは、リビングに面した対面式キッチンに変更。調理と収納に十分な最低限の広さだけを残し、できるだけリビングに面積を取るようにしました。完成したのは、のびのびと広がる心地よいオープンLDK。

次の課題だった玄関は、隣接する脱衣所のスペースを縮めてその分を玄関収納にし、スペースを拡大。ご家族の趣味であるキャンプの道具などをまとめてしまえるようになり、ベランダに置いていた物置が不要になるといううれしい効果も。また、玄関を抜けてすぐの廊下には、小さな納戸が設けられています。

「これは主人の要望なんです。朝が早く帰りも遅い仕事なので、私が寝ている時間に身支度をすると、電気をつける音などが気になるみたいで。だからプライベートの服をしまう寝室のクリーゼットとは別の場所に、仕事着をかける場所をつくってほしいと」

ご主人からの要望はそれだけだったと言いますが、ご家族への気遣いが感じられるリクエスト。こうしたささやかな配慮一つひとつが集まって、みんなが快適に暮らせる住まいが出来上がりました。

「あまり配置を変えなかったので、そんなに変化はないかなと思っていました。でも住み始めてみると、ちょっと変えるだけでこんなに変わるんだって、もうびっくり。使い勝手も良くなったし、全体的に明るくなりました」

見た目だけのオシャレより、
“本当にいい素材”を選びたい。

使い勝手が良くなった、という点に関しては、間取りのほかに素材選びも大きく関係しています。

「前に住んでいた家は、床が木目をプリントしたビニール製のシートで、それがすごく嫌だったんです。物を落とすとすぐに下の素材が見えるし、汚れも付着しやすい気がして。だから床は絶対に木材にしたかった」

そう話す奥様の想いに応えるべく、セキスイが用意したのは4種類のサンプル。おすすめは人気も高い杉の無垢材でしたが、高木家が選んだのは衝撃に強いカバザクラ。お子様たちが走り回ったとき、ツメなどで傷がつかないようにとの理由でした。中でも木目が目立たず色も薄めのものをセレクトしたので、見た目もすっきり、空間を明るく見せてくれる効果もあります。

キッチンの床には、悩んだ末にタイルを採用。タイルは冬場にやはりかなり冷えるので、当初はセキスイからもビニール床タイルを提案していました。が、高木様は素材感や高級感、安っぽく見えないことを重視し、結局磁器タイルに。見た目が良いことはもちろん、油汚れも落としやすいと大満足です。

素材へのこだわりはバルコニーにも。もともとバルコニーの床はコンクリートでしたが、マンションの大規模修繕でビニールシートに改修され、「なんだかペタペタする」と不満だったそう。リノベーションではセキスイのバルコニー用床化粧材「クレガーレ」を採用し、こちらも素材感の良さが感じられるワンランク上のバルコニーになりました。

「見た目はまるで本物の○○」「もっと手軽に○○風」「低コストでおしゃれに」。リノベーションに限らず、最近こうしたフレーズをよく目にします。でも高木様は、「低コストじゃなくていい。おしゃれじゃなくていい」と、そうした提案には懐疑的でした。もちろん、必ずしも天然や本物素材にこだわらなくても、ビニールや特殊素材などを使った機能的で質の良い素材が世の中にはたくさんあります。そうしたものを一概に否定するのではなく、大切なのはそれぞれの価値観と使い勝手のバランス。見た目の好みや掃除のしやすさを総合的に考えた結果、自分たちが納得して心地よく使えるものを丁寧に選ぶ。そんな高木様の姿勢は、リノベーションにおいてぜひ参考にしたい考え方です。

見えない部分も安心できる。
長く暮らすために欠かせない視点。

見えない部分も安心できる。
長く暮らすために欠かせない視点。

心地よさのためのこだわりと言えば、見えない「内側」への配慮も大切なポイントです。依頼先をセキスイに決める前、他社の提案プランを見て「構造にムリがあるのでは」と心配したこともあったという高木様。実は、ご主人がお仕事の関係で設計図面に詳しく、細かいところまでチェックできたがゆえの懸念でした。間取りやしつらえについての要望はほとんど出さなかったご主人でしたが、内部には妥協しません。

特に気にかけたのは、断熱材。断熱材があると、万が一火災が起きた際に被害が広がるかもしれない。そうご主人に言われ、奥様も当初、断熱材は入れないでもいいかと考えていました。5,6回打ち合わせを重ねるなかでも、断熱材についてはずっと「要りません」。しかし最終決定をする段階の打ち合わせで、セキスイからご主人に、改めて断熱材を再プレゼン。使用する断熱材が、住環境にとても有効であることや、火による燃え広がりにくさなどの特長を丁寧に説明したところ、最後の最後でご主人も「いいんじゃない?」とご納得。結果的にその断熱材が、リノベーション後の住み心地に大きく関わることに。

「私はエアコンが苦手なのでいつも冷房設定を28度にしていますが、今年は全然不快じゃないですね。ガラスをペアガラスにしたり、西日が当たりにくいように壁を追加したりした効果もあると思いますが、暑さは全く感じません」

そう言えば、“見えない部分”に関連して、もう一つ高木様が気に入った点がありました。それは、「点検口をたくさんつけてくれたこと」。入居後に水漏れがあったときも、自分たちですぐに確認することができたそうです。

「その場限りできれいにするだけじゃなく、アフターフォローまで考えてくれている。今後10年、20年と生活が続く中で、何かあってもきっと安心できるなと感じています」

子どもの家での遊び方が
以前より活動的になった。

最後に注目したいのは、お子様たちがのびのび暮らせるための、母親視点の配慮の数々です。たとえばリビングに物を極力置かず広々させたのも、お子様の遊びやすさを思ってのこと。隣接する子ども部屋とは回遊型になっているので、「子どもたちは回遊魚みたいにぐるぐる走り回っています(笑)」とのこと。

その子ども部屋には扉や壁を設けず、お子様が幼いうちは引き戸で間仕切りする程度に。将来的には2つの部屋に独立させそれぞれ扉を設けられるような設計にしています。ユニークなのは、間仕切りと天井の間にスペースを設け、空間を完全に仕切らないようにしたこと。扉を閉めても光が通り、エアコン一台で快適に過ごせます。そして子ども部屋の壁一面は、落書きOKのブラックボードが。お絵かきが大好きなお子様は、一目見た瞬間「えーっ、描いていいの? うそー!」と大興奮! ボードの内側には磁石を忍ばせてあるので、マグネットをくっつけて遊んだり、紙に描いた絵を貼り付けたり。お子様たちの自由な発想が壁いっぱいに広がる、素敵な仕掛けができました。

さらにもうひとつ、お子様たちに配慮したのは対面式のキッチンです。以前に住んでいたマンションも対面式ではありましたが、カウンターが狭くて使い勝手はいま一つでした。スペースも狭かったので、お子様がキッチンに入ってくると「危ないしジャマだから出ていって!」。せっかくのお手伝いや食育の機会も、キッチンが不便だからという理由で逃していたのです。
ところが今は、カウンター越しに料理をする奥様の姿を見られるようになり、お子様二人も興味津々。「お母さん、こんなに細く切れるなんてすごいね」とほめてくれることもあるのだそう。

「やっぱり女の子なので、お菓子作りなども一緒にできたらいいなと思っていました。キッチンに子どもたちがいても安心できるのは、大きな変化ですね」

家事をする母親の姿を間近で見て、そのやり方を自然と身に付けていく。それは家庭学習のもっとも理想的な在り方。お子様たちが今よりさらに成長したら、きっと奥様顔負けのお料理を作ってくれる……かも?

親子3世代の絆を深めたのは、
眠っていたあのピアノ。

お子様がいきいき、のびのび暮らせる家。しかしそれは、お子様たちにとってうれしいだけではありませんでした。それを物語るのが、そう、眠っていたご実家のピアノです。

「ピアノはずっと実家にありましたが、私はあまり続かなくて……部屋の片隅に置かれたまま。ピアノの上にも物を載せてしまって、傷がついているような状態で。リノベーションする前から子どもたちにはピアノを習わせていましたが、そんな置き方なので弾きたがることはありませんでした。ところがリノベーションしてピアノを置く場所がきれいになると、自分たちから『ひきたい』って。積極的に練習するようになりました」

そんなお孫さんの姿に影響を受けたのが、お母様。なんと、ピアノを習い始めたというのです。「手を動かすとボケ防止になると聞いて(笑)」とご本人は笑いますが、25年間ずっと誰も弾かなかったピアノを、いま、世代を超えてお母様とお孫様で楽しんでいる。そのことには、やはり大きな暮らしの変化を感じると言います。なにより、同居されているわけではないお母様が、娘様家族の家でピアノの練習をしている―――まさに、3世代の仲の良さを物語る光景です。

「朝から晩まで、ほぼほぼここに住んでいます(笑)。寝る場所が違うだけ」

そう語るお母様の言葉には、ご実家から次世代の新居へと生まれ変わった高木様邸の、居心地の良さがにじみ出ていました。